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町の人たちの想い溢れる「みんなの居場所」@地域食堂うれしか

2024.11.4

毎月第3土曜日のお昼時、十勝の上士幌町にある「ふれあいプラザ」という公共施設は町の人たちでにぎわいを見せます。その理由は「地域食堂うれしか」が開催される日だから。

「地域食堂」は、地域の子供達に食事や居場所を提供する「子ども食堂」という活動から派生して生まれたボランティア活動のこと。地域の人たちに低額で食事を提供することが活動のメインで、近年北海道や十勝エリアでも広がりを見せています。

地域食堂うれしかは「誰でも気軽にふらっと立ち寄ることのできるみんなの居場所」をコンセプトに掲げ、2020年に立ち上げられました。一般の飲食店とは異なり、調理をするのも提供するのも全て町のボランティアスタッフが行います。

今回は地域食堂うれしかの立ち上げ以来、代表と副代表を勤めている鈴木香(すずきかおり)さんと、吉田恵(よしだめぐみ)さんに、うれしか立ち上げに関するお話や、うれしかの活動に対する思いを聞かせていただきました。

写真左:鈴木香織さん、写真右:田恵さん

いろんな世代のいろんな職種の人が集まった会を作りたい

 

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中津
うれしかを始める経緯や立ち上げの時の話を聞かせていただいてもいいですか?
鈴木さん
もともと、上士幌町の社会福祉協議会の方と「まちなか農園」という活動をしていて、高齢者の方々と一緒に野菜を作っていたんです。そこで育てた野菜で収穫祭のようなイベントをしたいと思っていたのですが、コロナの影響でなかなか開催できないということがあったんです。

まちなか農園の様子

 

鈴木さん
せっかく作っても食べてくれた人の感想がダイレクトに聞けないもどかしさを感じて、社会福祉協議会の方と「地域食堂とかがあったらいいのにね」という話をしていたんです。
鈴木さん
他の町には町民が主体となった子ども食堂や地域食堂の活動があったのですが、上士幌町にはなかったので、「ないなら作ろう!」ということで、社会福祉協議会の方にサポートをしてもらいながら私が代表として立ち上げることにしました。
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中津
コロナ禍がきっかけとなり生まれた活動だったのですね。
鈴木さん
そうです。立ち上げるにあたっていろいろとリサーチする中で、いろんな世代のいろんな職種の人が集まった会を作りたいと思うようになったんです。だから、うれしかの立ち上げメンバーはあえて私から誘わないようにしていました。
鈴木さん
ただ、1人だけ、めぐちゃん(吉田さん)には絶対入ってほしいという気持ちがあって。町の人のことをよく知っているめぐちゃんがいてくれたら、いろんな人と繋がっていけると思ったから。なので、めぐちゃんは例外で私から直接誘ったんですよね。
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中津
吉田さんは誘われた時、すぐにうれしかに関わることを決めたのでしょうか?それとも悩みましたか?
吉田さん
実は、私も個人的に「子ども食堂」をやりたいと思っていたんです。家みたいなところに何人か子供たちが集まってご飯を食べて…っていう。だけど、1人だと仕事の時間とかもあるからなかなかできなくて。
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中津
鈴木さんの元々の活動と吉田さんの思いがかけ合わさって、出来上がったのがうれしかなのですね。
吉田さん
そうですね。だから、うれしかにはいろんな要素があっていいなと思います。地域食堂だから、1つで色々な人に届けることができるのが強みですね。

地域みんなにとっての「居場所」を目指して

うれしかは「地域食堂」という名前を掲げていますが、単に食事を提供をするためだけの場所ではありません。地域の人たちが誰でも訪れることのできる「居場所」の提供も行なっています。「食事の提供」と「居場所の提供」のそれぞれ二つの活動についてのお話をお聞きしました。

 

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中津
うれしかで食事を提供するときに大切にしていることはありますか?
鈴木さん
なるべく地域の方が作った野菜を町民の人に食べてもらいたいという思いがあるので、旬の野菜を味わえるようなメニューにしています。それをみんなで楽しく食べてもらえたら、という気持ちが強いですね。
吉田さん
メニューで言うとどんな人でも美味しいと思えるものを提供できればと思っているので、若い人向けの洋風メニューが続いた後は年配の人向けの和食メニューに、と工夫をして考えていますね。
鈴木さん
あとは、季節の行事に繋げられるようなメニューも意識しています。

ハロウィンを意識したかぼちゃメニューや、クリスマス感のあるチキンのメニュー。

 

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中津
季節感のあるカラフルなメニューでわくわくしますね!季節の行事に繋げるというのはどんな思いから始めたことなのでしょうか?
鈴木さん
知り合いのお母さんが 「うちは女の子三人いるけど、ひな祭りとか特に何もしないよ」なんて言っていて。私はイベントが好きだし、季節が味わえるようなことをするのが当たり前だとも思っていたけれど、今の若いお母さん世代だと面倒に思う方も増えているんだろうなとか、そもそも自分が子供の頃にそういう体験をしていなかったらできないよな、と思って。
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中津
確かに、時代的にハードルが上がっているのかもしれないですね。
鈴木さん
うんうん。絶対家庭でやってくださいっていうことでもないと思うから、負担のない範囲で雰囲気が味わえるものがうれしかにあったら楽しいなと思ってやっています。
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中津
うれしかは食事提供だけではなく、自由に過ごすことのできる「居場所」の提供も行っていますが、こちらにはどんな想いを込めていますか?

 

鈴木さん
「本が読みたいな」とか「ちょっと暇だから誰かと遊びたいな」とか、ふらっと1人でも来れるような場所であってほしいなと思っています。何かをしなきゃいけないところにもしたくないから、遊び道具とか工作道具とかは一応あるけれど、したくない子は別にしなくてもいいし、とにかく自由にしてもらいたいなという思いです。
吉田さん
「地域食堂」だから、子どもだけじゃなくお年寄りまで来てもらいたいなと思っています。お年寄りが子どもをただ見てるだけでもいいなって思う。「子供を見てるだけで元気がもらえる」って言ってくれる方もいて。どんな人でもほっとするような場所であってほしいです。

「誰かのため」が「自分のため」にも

 

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中津
どんなときに「うれしかの活動をやっていてよかった」と思いますか?
吉田さん
やっぱり、来た人に「美味しい」「楽しい」と喜んでもらったり、「また来たい」という言葉をもらえるときかな。「第3土曜日はうれしかの日だ」って言って子どもが来てくれることにもやりがいを感じます。
鈴木さん
私は、地域で一人で暮らしていて普段子どもと関わることがないようなおばあちゃんに、「子どもと一緒に食事ができて、元気がもらえる」と言ってもらえたり、泣きながら「ありがとう」と言われたりすると、こういう活動が地域には必要なんだって実感しますね。もう辞められないなと思います。

 

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中津
本当にその通りだと思います。地域の人が主体となって運営しているからこそ、人の温かみを感じられる活動になっていますね。今、うれしかスタッフメンバーは何人くらいいるのですか?
鈴木さん
今年の4月にも増えたので、現在は24人ですね。
吉田さん
最近は自分から入りたいっていう人ばかりで。ありがたいです。
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中津
うれしかのスタッフは年々増えていると感じているのですが、地域食堂に食べにきた人がスタッフになることが多いですか?
吉田さん
最近はお客さんで来てくれた後に「なにか手伝うことはないですか」と言ってくれる方が増えましたね。
鈴木さん
やっぱりそういう人は積極的に来てくれるんです。最初は簡単な調理を手伝う気持ちで来てみたけど、「なんか結構楽しいね」って言ってくれてそのまま継続してくれたり。そうするとこっちも嬉しい気持ちになります。
吉田さん
初こそ知らない人同士たっだので、なかなかコミュニケーションが難しいときもあったけれど、だんだん顔が知れていくうちに「これやっておいて!」なんて声を掛け合う場面も増えてきて、お互いにいい関係になってきたのかなと感じます。
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中津
うれしかは来てくれる地域の人のために食事や居場所を提供するものだけど、スタッフとして参加することそのものが「居場所」として機能しているなと、私もお手伝いさせていただいたときに感じました。

食事提供後にスタッフでまかないを食べる時間。わきあいあいとした雰囲気で、家庭の話や子育ての話など、何気ない会話が生まれる。

 

吉田さん
誰かのため」って思ってやっていることだけど、結局は自分のためになっているところはあるなと思います。
鈴木さん
最近スタッフになってくれた方も「最近出不精になっちゃって、ずっと家にいるんだ」と言っていた方で。だけど、うれしかに来たことがきっかけで、もっと外に出なきゃっていう気持ちが強くなってきたみたいで。うれしかのスタッフになることで知らない人とどんどん繋がっていってもらえたらなと思います。そうすることで、別の場所で会ったときにも、声をかけあえる関係性になれるんじゃないかなって。
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中津
スタッフにとっても、うれしかは大切な役割を果たしているのだなと感じます。繋がりの輪広がっていくことで、うれしかがない日でも町中に「居場所」があると感じられれば、素敵ですね。

年に一度、スタッフや食材提供者などの関係者で交流会も行われている。

この場所をたくさんの人に届けたい

 

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中津
これからのお二人の意気込みを聞かせてください!うれしかにどんな場になってほしいですか?
吉田さん
私は、今まだ来てない子供や町民の方に、1度でも足を運んでもらいたいなと思っています。そして、「うれしかっていいな」と思ってもらって、リピーターになってくれたら嬉しいです。あとは、細く長く続けていきたいと思っているので、自分自身も変わらずに楽しんでやっていきたいなと思います。
鈴木さん
いろんな人に何らかの形でうれしかに関わってほしいなと思っています。今、地域の方々から野菜や食材を提供してもらったり、調理スタッフとして関わってもらっているけれど、他にもいろいろな繋がりを持ってもらって、誰もがうれしかの一員ですって言えるようになったら嬉しいな。
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中津
調理はできないけれど子どもと遊ぶことはできるよとか、工作ならできるよ、といった”適材適所”のような形で、関わり方の幅が広がっていくといいですよね。

町民の持ち込み企画で木工や豆農家によるワークショップの実施も。

 

鈴木さん
うんうん。そうしたら、今まで来たことない人もふらっと来れるようになると思うんです。どうしても自分たちの知ってる人にしか声がかけられないから、いろんな人に関わってもらって、またその人がうれしかの活動を広げていくっていうことが、ちょっとずつできたらいいなと思っています。
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中津
ぜひ、たくさんの人に関わっていってもらいながら、うれしかがさらに町の人たちにとっての「居場所」になっていけばいいなと感じました。今回はお話を聞かせていただきありがとうございました!


最初は代表・副代表二人の思いから始まった活動も、いろいろな人が輪に加わって、どんどんと膨らんで行っています。上士幌町に住んでいなくてもうれしかに関わってみたいという気持ちがあれば仲間になれるそうなので、興味がある方はぜひ第3土曜日のうれしかの日に遊びに行ってみてくださいね!

 

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