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釧路唯一の酒蔵として地元に根付く福司の酒造りへの思い

2017.5.15

釧路には酒蔵があるのを皆さんは知っていましたか?
以前は釧路にも十数件酒蔵があったそうですが、現在は釧路唯一の酒蔵として地元で酒造りをしているのは福司さんだけ。
福司さんは札幌国税局主催の新酒鑑評会でも金賞を受賞、さらには全国でも金賞を受賞しており、その品質はかなりのものですね。
同じ釧路に住んでいるものとしても誇らしくなります。

今回は地元に根付き、活躍する福司酒造株式会社に伺い、取締役の青木さんにインタビューをさせていただきました。
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まずは酒造りがどんな流れで行われているのか調べてみました。

酒造りの流れはこのようになっています。

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さまざまな工程を経て日本酒が造られていることがわかります。

今回は一部ですが、実際の酒造りの現場を見せていただきました。
先ほどの画像だと④にあたり、お酒を実際に発酵させ醪(もろみ)を造っている場所でその様子まで見させいただきました。

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発酵している最中なのでぷくぷくと泡立っているように見えます。

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その次の工程がこちら。
画像だと⑤にあたる場所です。

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発酵させてできた醪をお酒と粕に分離する場所です。
板の間に醪を引き込んで圧力をかけながらしぼってお酒がたまるようになっています。

そして1番最後の工程がここ。

タンクがたくさん並んでいます。

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できたお酒はここで熟成されます。

現場を見させていただいて思ったのですが、手造りにこだわっているんですね。

そうですね。造り酒屋なり、酒造会社は2つに分かれています。
ひとつは外気、気候には左右されないように酒造りの環境を機械的につくり、完全に温度管理をしているところ。
テレビでCMをやっているような大きな酒造会社はその大半が機械を使用し、恒常的に工場でお酒を造っています。
だからといって質の悪いお酒って意味ではないです。
コンピュータ制御をしながらできるお酒だって、美味しくて良いお酒です。

もうひとつは自然環境を活用した形でお酒を造っているところ。

福司の場合はこちらにあたります。一部機械化はしていますけど、昔ながらの手造りに近い形で行っています。
刻々と変わる温度や湿度、風の吹き方も含めて、それに対してどういう風にお米の原料処理をするか、発酵の温度管理をどうしたらいいのかなど、きめ細かい体制をとらなきゃいけないので非常に苦労はあります。
逆にいうと手間を掛けることによって地元の風土を活かした酒造りができるというような形になっていると思います。

自然を生かした酒造りの難しさはなんですか?

ひとつは自然への対応です。
すべてオートメーションであれば均一なものができやすくはなりますが、福司は釧路の地酒としてここの風土もお酒の特徴だと思っています。毎日同じというのがベストですが、そうじゃないのが毎日です。風が吹けば気温や湿度が変わり、気温が変われば水温・室温も変わります。水温や湿度が変わればお米の給水スピードも変わります。変化を敏感かつ正確に感じ取るのが大変です。

次に、温度差です。

製造工程の中で通常仕込み蔵は0℃前後だったりするんですけど、麹を造る行程で「麹室(こうじむろ)」っていうのがありまして、そこは30℃〜35℃に保たれています。麹室の中ではTシャツ1枚で作業していますが、作業が終わって麹室から出ると温度差で湯気がたつくらいです。外気と麹室を比べると35℃以上の温度差があります。馴れないと結構過酷です。

あとは生活が酒造り中心になりますね。

麹をつくるときは泊まり込みで約2時間ごとに作業に入ったりしていますし、非常に大変だと思います。相手が酵母だったり麹菌だったりという微生物なものですから、日曜日は休ませてくれってわけにはいきません。仕込みが始まると交代では休みをとりますけど、休み無しで作業にあたっているという感覚になります。

自然相手だといつも同じやり方が正しいとは限らないですよね?
経験や知識などかなり必要なのではないでしょうか?

それは日本酒造りに限らず和菓子やそば打ちもそうですよね。
原材料の質や湿度とかで配合や打ち方を微妙に変えたりとかするのと同じで、酒造りもそういう意味では職人です。
そういう積み重ねをどんどんしていって一人前になっていきます。
その年によって温度も違うし、お米も農産物なので毎年出来も違います。毎年同じようにやっても同じようにお酒ができるかっていうとそうではないんです。原料の出来に違いがあってもそれを感じさせないように、毎年同じようにやっているって見せていかなきゃいけない訳です。

酒造りは一年中されているんですか?

福司の場合は寒造りっていう半年間、冬の間しか酒造りをやりません。
残りの半年間は何をしているかと言うと、作業にあたっていたデータを整理したり、新しいものをつくる研究、来期の作業を考えるなどやっています。
酒造りももちろん大切なのですが、この半年間の準備期間も重要です。
作業に入ったら進まなきゃならないので、そこまでに段取り8割やっておかないと物事はうまくいきません。
こういうお酒を造りたいってゴールを設定してそこから逆算していって作業に当たっていきます。ゴールにあわせて修正しながらっていうイメージですね。
経験がなく、理論だけではダメですし、理論はあとからついてこないと経験が無駄になったりします。経験・理論両方とも積み重ねてやっていかなきゃなりません。

かなり求められるものが多いですね。酒造りに携わっている製造部の方はどんな方なのでしょうか?

福司の製造部は平均年齢32歳で、北海道で1番若いメンバーで酒を造っています。

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昔ながらの伝統はもちろん、新しい目線でさまざまなことに挑戦していこうとするエネルギーがあります。あとは酒造りがみんな大好きですね。

釧路唯一の酒蔵としてどんな思いで酒造りをされていますか?

地元にどうやって還元できるお酒を造れるかっていう考え方でやっています。
おかげさまで地元の方々が盛り上げてくれるようになってきました。
やっぱり良いお酒を造ることで誇りをもって外の人に紹介してくれる、贈ってくれるという方向になってきていまして、やっぱりそういう造り酒屋があるということを誇りに思ってもらえるようにきちんと良いお酒を造っていくという形で還元していこうと思っています。

地元以外に対してはどう思っているのでしょうか?

たしかに気持ち的には釧路だけじゃなくて札幌、もしくは本州、東京周辺も含めて販売できれば確かに良いんですけど、ご紹介したように造り酒屋の規模なので釧路以外に出荷するとなると、この規模の施設じゃ無理なんです。
ですので、今この規模で最大限、手作りでやる中で一番いい方法を考えると、やっぱり地元で造って地元で消費してもらう、もしくは地元の方から外に出してもらうっていうのがいいですね。

地元の方々に愛されて地元の方が欲している訳ですから、それに極力応えようというような形をとったほうがいいことになるんですよね。

札幌含めて釧路管外からの需要は来ていますし、品質のコンテストでも連続して金賞をいただいていますので、全国の酒屋さんから問い合わせもいただいています。

でも、今言ったような話の中でお断りしているのが現状です。

これは蔵ごとの考え方なんですよね。
うちみたいな規模でも全国に販路を広げているところもありますし、うちよりも製造量が少なくても有名な蔵はあります。福司の場合は地元に需要がある以上、地元最優先で対応しなければならないという考え方です。

インタビューを振り返って

正直、ここまで手間がかかっているとは思いませんでした。人の手ではコントロールできない自然を相手に手造りでお酒を造ることの大変さ、福司さんのお酒にかける熱意をとても感じました。
そして、地元に対してここまで思ってくれる企業が同じ地元にあるということも嬉しくなりました。

次回も引き続き酒造りにまつわる記事を掲載予定です。

実は、酒造りの大変さは日常生活にもあるんです。私たちが普通に食べているアレがだめとか…!気になる内容は近日公開予定です。

■福司酒造株式会社 / 直売所
住所:北海道釧路市住吉2丁目13−23
電話番号:0154-41-3100
・直売所の営業時間
平日:10:00~16:00
土曜:10:00~14
:00
休業:日・祝・年末年始
(大型連休、お盆時期などは別)


釧路トヨタの社員が記者として、くるまやくらしを通じて感じた道東エリアの魅力を伝えるWebマガジン「DO-Life

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