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本別町出身・斎藤英和さんがスペシャルティ・コーヒー専門店『HIDE COFFEE BEANS STORE』を東京に開くまでのお話・前編

2019.7.12

東雲でスペシャルティ・コーヒー専門店『HIDE COFFEE BEANS STORE』を経営している本別(ほんべつ)町出身の斎藤英和さん。大手企業のサラリーマンから自営業に転身するまでの思いや苦労と、斎藤さんを脱サラに向かわせたスペシャルティコーヒーの魅力について語ってもらいました!

【取材協力】東京・東雲「HIDE COFFEE BEANS STORE

スペシャルティコーヒーとの出会い

ーー斎藤さんがお店を始めるきっかけはなんだったのでしょうか?

長年サラリーマンをやっていて、大学を出てからは同じ大手カード会社に22年間務めていたんです。それから脱サラをして2013年10月に自分の店を持ちました。お店を開く前からコーヒーショップと一緒に豆の販売も手がけるビーンズショップをやろうと考えていたんです。それで、会社を辞める3年くらい前から、少しずつ準備を始めたんです。会社に悟られないようにしながら、週末に珈琲店主催のセミナーに通いました。

ーーコーヒーのセミナーがあるのですか?

当時、成城学園前に老舗の珈琲店『堀口珈琲』のセミナーハウスがあって、そこは開業支援をしてくれる仕組みがあったので通うことに決めました。

ーーセミナーではどんなことを教えてくれるんですか?

一番は「カッピング」という味をチェックするセミナーですね。何種類ものコーヒーを飲み比べるセミナーで、それをやることによって産地の特徴などを舌で覚えるんです。味覚で覚える、たとえばケニアらしいコーヒーの味がするとか、エチオピアの特徴がこのコーヒーにはきちんと出ているとか、ブラジルのコーヒーはこういう傾向だとか。そういったことを何回も繰り返しやっていくことで味を覚えていくんです。同時に味の表現も覚えていくんですが、コーヒー豆は果物の種なので、果物らしい酸味を感じたりする。柑橘のフレーバーがするとか表現するんです。そういったことを繰り返しやっていくことで「良いコーヒーか悪いコーヒーか」を判断できるようになっていく。お店を始めたら、当然、自分で豆の買い付けや焙煎をします。そこで焙煎の技術も必要ですが、焙煎して液体として入れた時に「よくできている、できていない」を判断できていないとダメ。だから、カッピングができるようになることがすごく大切で、そこに時間をかけるんです。1回や2回で覚えられる技術ではないですね。

このカッピングを覚えるために、斎藤さんは月1~2回のペースで3年間通ったとのこと。

ーーコーヒーに目覚めたきっかけはなんでしたか?

もともと、コーヒー好きだったんですよ。会社員時代から毎朝ドリップしたコーヒーを1杯飲んで出勤して、趣味でコーヒー屋さん巡りをしていました。10代~20代まではコーヒーがあったら飲むといった感じでしたが、30代から自分でコーヒーをドリップするようになったんです。でも、その時も「こっちの方が美味しいかな」と思ってなんとなく飲んでいるだけだったんですよ。それで、40歳くらいのある時、「スペシャルティー・コーヒー」というグレードの高い豆があることを雑誌で知って、そのコーヒーを扱っているお店を何軒か巡っていくうちに、「今まで飲んでいたコーヒーと違うな」と感じ始めました。「コーヒーって産地、品種、作り手によってこんなに味が変わるんだ」ということがその時にわかって、「これはおもしろいな」と思って段々とのめり込んでいくようになりました。中でも特に美味しいと感じたのが堀口珈琲店だったんです。

スペシャルティ・コーヒーとは、豆の栽培・収穫・生産・選別まで品質管理がしっかりと行なわれ、欠けた豆の混入がほとんどない生豆を使ったコーヒーのこと。このコーヒーを飲むため、斎藤さんは関東はもちろん、北は網走、南は沖縄まで行ったそうです。しかし、それはあくまでも趣味の範ちゅう。初めからコーヒー専門店を自身で開くとは考えてもいなかったとのこと。

最初から何が何でもコーヒー店をやりたかったわけではないんです。会社員の時から、自営業に転身することをずっと考えていたんです。何というのは見つかっていない状態で、30代前半からぼんやりと自営業に対する憧れみたいなものをいだきました。大きな会社の組織に入って仕事をするよりも「何か自分でやりたいな」と、そんなことを常日頃考えている中で、スペシャルティ・コーヒーに出会ったという感じです。「これだったら自分でずっとやっていけそうかな」と思い決めました。

40代で脱サラ、ついにコーヒー専門店を起業

ーー起業するまでの資金は、どれくらいかかりましたか?

ある程度は準備しましたが、1,000万円くらいはかかりましたね。

ーー奥に見える機械も高価そうですよね。

あれは焙煎の機械で、300万円くらいしますね。「フジローヤル」というブランドで、日本では一番メジャーな機種ですね。いろんなお店を巡った時に、どの焙煎機を使っているのかもお店に聞いたんですが、自分の好みの味を作っていたお店がみんなこれを使っていたのでこれに決めました。豆の特徴をきちんと出せるよう、全体に火が通るように作られていて、素材の味をきちんと出してくれます。焙煎機はアメリカ製、ドイツ製、オランダ製等があるんですけれど、メンテナンスのことで日本製に決めたというのもあります。

ーー東雲にお店を開いた理由はなんですか?

この辺の湾岸エリアはこういったコーヒー屋がなかったんです。住む人も増えている町だから絶対コーヒー好きも住んでいるし、美味しいコーヒーを知ってもらいたいなと思って、このあたりで店舗を探しました。

ーーお店に来る人はどんな人が多いでしょうか?

自宅でコーヒーを入れる方が中心で、東雲・豊洲・湾岸エリアの方が多いです。年齢も男女差も特に関係ないですね。オープンからら少しづつ口コミで広がってお客さんが徐々に増えていった感じです。平日1日で20~30人くらいでしょうか。土日だとその倍くらいですね。

ーーちなみに、斎藤さんは独身ですか?

妻がいますよ。お店には出ませんが裏方でポップやパンフレットなんかを作ってくれたりしています。

ーー脱サラに対して、奥様は反対しませんでしたか?

もちろん大反対されました(笑)。妻も自分の親も大反対ですよ。そこを押し切りましたけれどね。一度しかない人生ですし、どうしてもやってみたかったんですよね。大企業の中にいた時は、やりがいというもので、10年近く悶々とした日々を送ってましたね。

都内でスペシャルティコーヒーを扱う店舗について


ーー都内にスペシャリティコーヒーを出すお店はいくつくらいありますか?

100店舗以上はあるんじゃないでしょうか。勉強中に知り合った同業者たちが、北は北海道、南は沖縄までで100件くらいあります。その100件くらいでまとまって1つのグループで豆の買い付けをしているんです。堀口珈琲で買い付けてきた何十種類という豆を自分たちが使いたいものをそこから選んで、それを焙煎しています。ここにある袋にもありますが、「LCF」とういう名称のグループですね。なのでこの業界だと「『LCF』に入ってます」というと「堀口さんのところね」とすぐにわかります。

その他にも、南千住の珈琲店「カフェ・バッハ」のバッハ系列、軽井沢に本店がある「丸山珈琲」の丸山チームが有名なところで、もちろん個人で輸入しているところもあるとのこと。

ーーここにある認定書はなんでしょうか?

日本スペシャルティコーヒー協会というのがあるんですが、そこの資格で《マイスター》という資格があって、その上級編で《アドバンスド・コーヒーマイスター》を取ると貰えるものですね。

ーー試験では、どんなことをするのですか?

基本は筆記ですね。実技は3パターンくらい選べて1日だけ。筆記は4日くらいかかります。その4日が連続してあるわけではなくて、3カ月ごとに1項目ずつやるので、4つ全部クリアするには1年くらいかかるんです。

斎藤さんは開店前にマイスターを、開店後にアドバンスド・コーヒーマイスターを取得したそうです。現在、資格を持っている方はマイスターは5,100人程度、アドバンスは350人程度。中には、このバッチをつけてお店に立つ人もいるそうです。

家族の反対を押し切り、10年間思い描いていた自営業の道を選んだ斎藤さん。後半では、北海道の思い出や『HIDE COFFEE BEANS STORE』のオススメの豆、自宅でのコーヒー豆の保存方法などをお聞きしました!

後編はこちらから


Profile

斎藤英和(さいとう・ひでかず)
1968年生まれ、北海道中川郡本別町出身。
44歳で脱サラ、東雲でスペシャルティ・コーヒー専門店『HIDE COFFEE BEANS STORE』を開業。豆は個人での購入はもちろん、店舗への卸しも行なっている。

Officialウェブサイト「HIDE COFFEE BEANS STORE

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