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ラーメン紳士が郷愁の味わい『釧路ラーメン』を求め、東京砂漠を今日もゆく!【一杯め】

2019.1.9

都会暮らしに疲れた、釧路出身の某40代サラリーマン。
故郷を飛び出してはや20年寄る年波には勝てず、最近は鼻毛に白いものが混じるようになってきた。
今でも唯一思い出すのは、オヤジと食べたしょっぱくて美味い『釧路ラーメン』。
仕事を干されたとき、女に振られたとき、無性に食べたくなる、が…無い。
『札幌ラーメン』『横浜家系』『博多豚骨』…ラーメンのご当地ブランドは数あれど、
『釧路ラーメン』は全国区ブランドとまでは言えないからだ。
でも、どうしても食べたくなるときがある。せめて “近い” ラーメンはないものか。
こうして彼は “ラーメン紳士” として『釧路ラーメン』に近い一杯を探し、
今日も東京砂漠を彷徨う…。

というわけで、前置きが長くなりましたが新コーナー “ラーメン紳士” 一杯めは東京を代表するあの場所を取材してきました。以下 “ラーメン紳士” が語ります。

東京の摩天楼で出会った懐かしの味

東京には美味いラーメンなど、腐るほどある。
“日本一平均気温の低い街” 釧路から上京してはや20年、小腹が空くたびにラーメンを貪り続けた私の舌は、いつの日から美味しさだけでない別のものを求め始めていたようだ。

決して裕福ではない家庭に育った私にとって、外食の思い出といえばラーメン。
私とオヤジは醤油、母と妹は塩。ああ、極細のちぢれ麺に、塩気の強い醤油スープよ……。寒風吹きすさぶ漁師町に生きる男たちの塩分を補ってきた、攻撃的に強い味付けは、私にとっては3カ月に1度の “限られた祝祭” だったのだ。

私ははっきりと気づいてしまった。
いつからか私がラーメンに求めていたのは《美味》だけでなく、
《郷愁》という掛け替えのないスパイスだったのだと―。

あのときの一杯を求めて今回辿り着いたのは――新宿都庁


意外に思われるかもしれないが、都庁の職員食堂は一般にも開放されているのである。
充実した定食類が低価格で、しかも新宿副都心から都内を一望できる超高層階で食べられる穴場として、知る人ぞ知る名所なのである。
ネット上の噂によると、ここの名物『都庁ラーメン』が釧路ラーメンに似ているらしい。

期待に胸を踊らせ、まずは受付で食堂入場の申請をする。申請無しでは入れないのだ。


警備員からIDカードが手渡され、ゲートのセンサーにタッチして32階にある職員食堂に向かうエレベーターに乗り込む。さすが、2020年にオリンピック開催を控える東京都政の要所だけに、セキュリティ体制も万全ということか。

…広い。そして美しい。


弊社の食堂よりはるかに広く、メニューも充実している。すごい、すごすぎるぞ公務員。さすがは、東京だけでなく日本経済をも支えている人々の台所。


発見した。
見た目から伝わってくるものはない。そもそも釧路ラーメンに見た目の特徴など無いと思う。名物と謳われている『都庁ラーメン』はお値段なんと570円。出汁、トッピングの具材は純東京産で、麺は1.5人前のスペシャルな一品だ。
海苔にはあの環七ラーメン戦争の雄だった名店「なんでんかんでん」よろしく、印刷までしてある。今日は調査ということで、塩も注文(510円)した。味噌はハナっから捨てている。

さらにカフェスペースを見ると「北海道メロンパン(190円)」「北海道つぶあんパン(170円)」という文字が飛び込んできた。普段は甘いものなど一切手を付けない私であるが、こちらも購入。まさに郷愁の為せる業である。でも、メロンパンとあんパンって釧路にあったっけ?


コスパも最強、知る人ぞ知る「都庁ラーメン」!

そして一際見晴らしのよい席を確保した私は、東京の摩天楼で故郷を探すことに。
澄んだ醤油スープに縮れ麺、本場より少し太めだろうか。
乗っている具材はシンプルで、海苔とネギ、焼豚1枚、メンマ、ほうれん草。
ほうれん草が乗っているところに懐かしさがこみ上げる。

興奮してコショウをかけすぎた。
いただきます。まずスープを一口、音を立ててそのまま縮れた麺をかき込む。


ん? これは……! 取材を忘れて一気に3分の1ほど食べてしまう。

確かに、近い。スープの塩気とほのかな甘さはかなり本場に近く、どこか懐かしい。
これは、店というより家で食べていた手作りラーメンに近い気がする。家では龍のイラストが描かれていた「ラーメンスープ」を使用していた。あのペーストは一部の釧路ラーメン屋にも置かれていたような記憶がある。

麺も普通に美味しい。しかし、半分を食べる頃には、縮れ麺はもう少し細く、もう少し縮れがきつかった気がしてきた。


焼豚はイメージと異なった。ちなみに私は好物の焼豚は後半に取っておく派である。
私の中で釧路ラーメンの焼豚はカチカチカラカラのやや薄切りという印象だが、都庁のそれはウェットな肉質で、ハシでつまむとしなっている。

また、煮玉子には少々興ざめであった。ここは賛否両論あるだろうが、私の記憶の中の釧路ラーメンに煮玉子は無いからだ。そのせいもあって、私はこれまでラーメンにおける煮玉子トッピング否定派だった。が、残すのも悪いと思ってほうばった煮玉子はかなりの絶品で、しっかり濃く甘塩っぱい味が染み込んでいる。単品としての完成度は高い。

情熱と冷静の間――私は今、時空を超えて釧路と新宿の間を行き来している。

夢中で最後の一滴まで飲み干した少年時代のように、私はあっという間に完食をしてしまった。この満腹感で、570円は安い。東京の店なら750円〜800円クラスだろう。
そして、作り方も材料も大きく異なるであろう『都庁ラーメン』にほどほどの釧路感を覚えることができたのは、スープの力が大きい。

ここからは蛇足になるが、塩ラーメンもチェック。しかし私は釧路時代にいっさい塩ラーメンを食べなかったため、普通に美味しいがややしょっぱい、という以外ほぼ判定は不可能だった。


余力があったため、夜食として購入したパンも一気喰い。


うん、これも美味い。北海道つぶあんと北海道メロンパン(クリームが入っていて美味!)も完食し、ものはついでと47階の展望台に上った。


周りにいるのは、ほとんどがインバウンドの外国人観光客である。
新宿副都心から中野サンプラザ、そして遠く都下までが一望できるパノラマビュー。見渡す限りの東京砂漠が広がっている。
それぞれに人の生活が営まれていることを想像すると、ムスカの気持ちがわからなくもない——そんな気になる私は、とことん都会が向いていないのだろう。


結論を言おう。『都庁ラーメン』に釧路を感じることはできた。しかし《郷愁》を感じたか、と問われればそれはNOである。もちろん、この評価はあくまで『釧路ラーメン』に近いかどうかであり、ラーメンそのものの美味しさの評価でないことは念を押しておく。都庁の料理人は釧路ラーメンのことなど知りもしないだろう。

さて、行くか。

まだまだ私の《郷愁》を探す旅は続きそうだ。


《ラーメン紳士判定》
スープ=A
麺=B
トッピング=C
総合シンクロ率=50%

【都庁第一本庁舎32階職員食堂】 
住所:東京都新宿区西新宿2-8-1 東京都庁第1本庁舎32F
営業時間:11:30~14:00(ランチタイム)・8:00~17:00(カフェ営業)
定休日:土・日・祝・年末年始
電話番号:03-5320-7510
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