あれ?・・・動物がぐったりしている。
そんな動物園、嫌じゃないですか!?
動物園に行ったのに動物の元気がないと悲しいですよね。
私たちが当たり前のように、元気な動物が見られるのは飼育員さんのほかに獣医師さんがいるおかげなんです。
人を相手にするのと違って言葉が通じない動物を相手にするのは大変なはず。
動物たちの健康状態はどのように察知しているのでしょうか。
釧路市動物園の獣医師の藤本さんに伺いました。
見た目が勝負の健康チェック
動物の体の不調はどうやって見つけるんですか?
動物は自己申告してくれませんので、見た目が勝負です。動物はほとんど触らせてもくれませんし、基本的に触れあったら死にますから(笑)
よく考えるとそうですね…!では、どんなところを見ているんですか?
例えばこちらの動物。
トラだと、かばっている足があると変な歩き方になっていたりします。あと、下痢をしていたりするとお尻の周りが汚れているとか。犬や猫と一緒でトラは普通に吐くんですけど、吐き方とか、吐いたものに変なものが混じっていないかとか見ています。
全部の動物を見て回っているんですか?
全部は見てまわれないのでそこは飼育員さんと連携しています。飼育の方が1番接しているので肌で感じる感覚、匂いが違うとか、食べ方や歩き方とか、飼育の方が1番の飼い主さんなので飼育員さんから聞いてちょっと見に行ったりとかね。
素人の私でも見た目からわかりますか?
素人の方もわかりますよ。「あ、この子、調子悪いのかな?」と思ったら調子悪いと思います。
そうなんですね!獣医師さんになりきって動物園をまわってみようかな~
ただ、人間と置き換えてみると勘違いすることもあると思います。
例えば、お客さんが勘違いされるのは動物が寝ているとき。ずっと寝ているのを見ると、ぐったりしているのかな?と不安になるかもしれませんが、ライオンは1日20時間寝ていると思ってもらってかまわないぐらい寝ているのが普通なんです。
え、ライオンってそんなに寝ているんですか!?百獣の王という姿からは想像できません。
びっくりされると思いますが、こんな風に寝ている姿が普通なんです。
あと、先ほどと重複しますが、犬や猫と同じでライオンやトラは吐くのが普通なんです。ただ吐く中身によってはおかしなことになりますので吐いたものを見ています。
人だと吐いたら「まず病院!」ってなりますけど、ここもまた違うポイントですね。
そうですね。あとは、ぱっと見てもなかなか分からないとので、何回か見てもらうと違いがわかってくるかなと思います。
上でも話題にあがりましたが動物たちのそれぞれの睡眠時間はこの通り。
人に身近な犬や猫は13時間ほど。
馬や牛などの草食動物は1日3時間、キリンになると1日2時間程度。
草食動物は肉食動物と全然違います!
動物のこういった生態を知ってから見ると動物たちへの見方が変わってきますね。
人間と動物、ここも違う!
20時間以上寝る、吐くのが普通など、人とは全然生態が違いますね。
そもそも野生で暮らしていた動物たちには他にもこんな違いがあるそうです。
動物は体調が悪くても隠したり、嘘をついたりすることはありますか?
嘘はつかないんですけど、隠しますよね。野生では、弱みを見せても誰も助けてはくれません。それに、弱っている動物をクマタカとか捕食者が食べちゃうので、動物たちはなるべく弱みを見せないようにします。
人間だったら弱って来ると「あぁ、つかれた。今日休もう~」ってなるんですけど、そういうのは野生の中では死ぬことにしかなりません。
なので、動物は本当に「よくこれで生きていたな」という状態が全然あったりします。それに気づいてあげるのが担当者の目線ですね。
それを見た目や様子で見極めている獣医師さんや飼育員さんたちの目はすごいですね。さっきは私でもできるかな?って思いましたが、やはり経験がないとできないことなんだなと思います。
獣医師さんの麻酔はすごい
取材にあたり、いろいろな動物園を調べているときに知ったのが手術する際に吹き矢で動物に麻酔をしているということ。
この時代に吹き矢って本当にあるのかな?と疑問に思ったので聞いてみました。
獣医師さんは吹き矢をするって本当ですか?
動物園に勤めた獣医師さんは吹き矢をある程度、練習はすると思います。というか絶対練習しないと無理ですね。
吹き矢の話は本当だったんですね!
ちなみに、吹き矢だけじゃなくて麻酔銃もあるんです。
麻酔銃は空気銃なんですけど、それも練習しないとなかなかあたらないので練習はもちろんします。あとは長い槍もあります。ただ、槍は使う場面が限られちゃうのでなかなか使う機会がないんですけどね。
ちょっと怖くなってきました…!練習もされるんですね。
獣医師の仕事だけじゃなくて皆さんもそうだと思いますけど練習しないとできませんし、練習しなくても経験をつまないとなかなかうまくならないっていうのがあろうかと思います。それと一緒ですよね。
麻酔をするときも1発本番っていう機会がほとんどですので、それに合わせてある程度シミュレーションをやったりしています。
動物たちの命がかかわっている現場なので事前にきちんと準備をしているんですね。
吹き矢に麻酔銃、そして槍って、それだけを聞くと獣医師さんが武器職人みたいです。
動物園だと近づくと危険な動物や人の力では抑えられない大きな動物もいます。
そのためこうした道具を使う必要があります。
動物と獣医師さんの関係
動物のために尽くしている獣医師さんは動物との信頼関係があるのかなと思いきや…
藤本さんは「獣医師は動物から見たら悪いことしかしませんので信頼関係はありません(笑)」と言っていました。
どうしてかな?と考えてみたのですが、こういうことなのではないでしょうか。
小さい子の立場からみたとき、毎日お世話してくれる飼育員さんは例えばお母さんやお父さんのような安心できる存在。対する獣医師さんは注射など痛いことをする怖い存在のお医者さん。
だから、小さい子がお医者さんを怖がるように動物も獣医師さんに対して嫌な印象を持ってしまうことに納得です。
嫌われ役をかってでも動物と向き合う獣医師さんがいるから動物たちは元気に過ごすことができ、私たちも元気な動物を見ることができます。いつも元気なのが当たり前のように感じていましたが、獣医師さんの存在があってのことなんだな、と実感しました。
■釧路市動物園
住所:北海道釧路市阿寒町下仁々志別11番
電話番号:0154-56-2121
・開園期間
4月10日~体育の日(10月):午前9時30分~午後4時30分
体育の日の翌日~4月9日:午前10時~午後3時30分
・休園日
12月~2月の毎週水曜日(祝祭日にあたる日を除く)
12月29日~1月2日(年末年始)
釧路トヨタの社員が記者として、くるまやくらしを通じて感じた道東エリアの魅力を伝えるWebマガジン「DO-Life」