こんにちは、本社の石久保です!
最近街を歩いていると、外国人旅行客の方を良く見かけるような気がしませんか? ずっと地元にいると「海外に誇れるものなんてあるのかな?」とか「釧路は何もないよ~」と感じてしまいますが、そうではないのかも…? と思い始めました。
そんな時に、南大通で新たにゲストハウスを始めた方がいらっしゃるという噂を耳にしました。しかも観光に詳しい方だとか…。大変失礼な言い方ではありますが、南大通ってお世辞にも栄えているとはいい難いですよね…。そこでなぜゲストハウスを始めようと思ったのでしょうか?
ということで今回は、「ゲストハウス幣(ぬさ)」をオープンされた小林 真さんにいろいろお話を聞いてまいりました(^^)!
そもそもゲストハウスってなんだろう?
…とその前に、ゲストハウスってそもそもどんなところなんでしょうか? 実はあまり知らないんですよね…^^; ということで、取材前に少し調べてみました。
ゲストハウスは宿泊をする施設のことで、ドミトリーと呼ばれる相部屋があることや、トイレやシャワー、キッチンなどの設備が共用になっているところが大きな特徴となっています。そのためホテルや旅館よりは格安で泊まれるところが多いようです。
日本ではまだあまり認知されていませんが、欧米をはじめとする海外では一般的な宿泊施設だそうです。実際に宿泊してる方も外国人の宿泊客が多いんだとか。
素敵な空間が広がる「ゲストハウス幣(ぬさ)」
ゲストハウスについて勉強したところで、いよいよ「ゲストハウス幣」へ!
チャイムを押すと、オーナーの小林さんが気さくに迎えてくださいました。
今回は1階のリビングでお話を伺いました。大きなテレビや雰囲気のある絵画があって、とってもすてきな空間でした! 今日はたまたま空いていましたが、普段はこちらも貸出されているそうです。
隣には和室が。畳の部屋があるとほっこりしますね^^ 海外の人も喜びそう!
キッチンや洗面所もとても清潔感があって、何日でも泊まれそうでした♪
この日すでに利用者がいらっしゃったため、写真を撮ることはできませんでしたが、3階もゲストハウスとして貸出されているそうです。気になる方はぜひ問い合わせてみてくださいね。
釧路が消滅地域!? 地元を守りたい想いから生まれたゲストハウス
ゲストハウス幣の中を一通り見せていただいたところで、まずは小林さんご自身についてお話を伺いました。
ご出身は釧路だという小林さん。中学までを釧路で過ごした後上京され、大手IT企業で35年間勤め上げ、2018年4月に定年退職されました。ゲストハウスを始めるきっかけのひとつは、その時に目にしたあるデータでした。
それは国土交通省が作成した「2050年の日本の国土のグランドデザイン」というもの。そこには2050年の日本の予想人口分布図が描かれていたのですが、道東は消滅地域となっており、なんと真っ白だったそうです。
生まれ育った地域の行く末を見た小林さんは「そんなはずはない」「自分の地元がこれでいいのか」という思いと共に「止められるなら止めたい」と感じるようになったそうです。
釧路を拠点に楽しむという点では、体験やアクティビティなどたくさんの入り口があると思いますが、あえて民泊にしたのには理由はあるんですか?
実は民泊にしたいという意識は特になかったのですが、楽しんでもらうために泊まる場所は必要だなと思っていました。旅館業だとハードルが高そうな感じがしますが、民泊だと外国人と応対する敷居が少し低くなる感じもしたので、この形にしました。
こうしてゲストハウスを始めることにした小林さんは6月末頃に建物を取得、内装を整えて8月に無事オープンすることに。しかし、最初は民泊としてではなく、長期滞在者向けのマンスリーマンション(賃貸)としてのスタートでした。
というのも、民泊には都道府県の認可が必要で、許可が出るまでに時間がかかるそうです。実際に許可が出たの11月だったとか。
民泊と賃貸では何が違うんですか?
賃貸の経営には国や役所の許可は特に必要ないんです。例えば30泊以上する場合はマンスリーマンション(賃貸)として部屋を提供できます。しかし、もっと短期の宿泊は民泊か旅館業の許可を取らないとできなんです。
そんな違いがあるんですね!
あと賃貸の場合、火の扱いについては泊まっている人の責任になりますが、民泊の場合だと泊めている人の責任になります。
いろいろ違いがあるんですね。
釧路は発信不足? ビッグデータから見た釧路
実は退職する3年ほど前から、釧路市のインバウンドのプロジェクトで年に何度かは釧路に帰ってきていたそうです。
そこで小林さんが取り組んでいたのがビッグデータの分析でした。海外渡航者がSNSなどに発信している声を拾って数値化することで、どの国からどのくらいの人が来ているのか、釧路に対してどんなことを感じたかなどが一目でわかるそうです。
実際にビッグデータからどんなことがわかったんですか?
例えば釧路はイクラやイカなどの海産物が有名ですが、函館などに比べるとSNSの声はまだまだ少ないですね。ほかにも釧路はラーメンが有名ですが、旭川などと比べると認知度はまだまだのようです。実はラーメンって、外国人には人気のメニューなんですよ。
そうなんですか! 知りませんでした。
ほかにも釧路は二次交通の悪さが指摘されています。実は外国人観光客の方は路線バスが好きな方が多いんです。そのため普通では考えられないような移動範囲もバスで移動しようとするんです。
例えばどれくらいの距離ですか?
そうですね…例えば釧路から阿寒、弟子屈に行って、最後に女満別空港から帰るルートで行きたいとすると、外国の方はそれを全て公共交通機関を使って、しかも1日で行こうとするんです。
一日でですか!?
そうです。日本人なら考えられないですが、外国人の方は2時間ぐらいなら平気で待ちますからね。
本当に日本人なら考えられないですね…。
あと、国によっては日本でレンタカーが運転できない国の方もいるので、そうなると必然的に公共交通機関でしか移動ができないですよね。
確かに。でも今の釧路で車を使えないとなると、行けるところも限られますよね…
そうなんですよね。ですがそこは対策の動きが出てきているので、今後どうなるかですね。
なるほど。ちなみに北海道に来る外国人の方って、だいたい何泊ぐらいされるんですか?
実はこれもビッグデータ分析で分かるのですが、外国人の方はだいたい1回の旅行で2週間ほどは滞在するようです。ですが、釧路には1泊しかしないんですね。
そうなんですか?
はい。釧路に来ることが目的ではなく、釧路を通過点として来ることがほとんどなんです。ですから、釧路を拠点に楽しんでもらえるようにしたいですね。
一年前から予約でいっぱい! 釧路の避暑地需要
※小林さんが撮影された夕方の釧路
釧路にはまだまだ解決すべき課題がたくさん残っていますが、外国人旅行客は年々増加しています。また国内でも長期滞在ではとても人気があり、「北海道体験移住ちょっと暮らし」という長期滞在事業では、北海道内で堂々の1位にもなっているそうです(※)。
※平成29年時点
実際にこちらに泊まりに来てる人はどんな人が多いんですか?
まだゲストハウスとしては始まったばかりなので、利用者は国内の長期滞在者が大半ですが、仕事で来ている方や夏に避暑地としていらしている方が多いですね。実はすでに来年の予約が入っていて、夏はもう売り切れているんです。
もう来年の予約まで入ってるんですね! しかも売り切れてるなんてすごい!!
夏の釧路のニーズはかなり高いんですよ。うちもインターネットの予約サイトに掲載したら、なんと1時間で予約が入りました。しかも上海からの予約でしたね。
さすが長期滞在1位の街!特に夏は1年前には予約でいっぱいになるほど人気なんだそうです。国内・国外問わず、釧路は長期滞在の需要が高いことが良く分かりますね。
釧路が生まれた最初の町で
それにしても、なぜ南大通りにオープンされたのでしょうか? 釧路は他にも繁華街があると思うのですが…。
気になったので聞いてみたところ、南大通周辺の元町と呼ばれる地区は、釧路で一番最初に開発された場所と言われており、昔はすごく賑やかな場所だったそうです。しかし、現在は人口が減少しており、特に20代から30代の方の若者が多くこの地を去っているのだとか。
ここは中心街にも近い場所なので、安く泊まっていろいろな所で美味しいものを食べてもらいたいという想いがあります。またこの地区は自分の地元でもあるので、やっぱり地元に貢献したいという気持ちもありますね。
こちらには若者や子育て世代の方が過ごしたくなるような町づくりをするために、様々な活動をされている「くしろ元町青年団」という団体があります。小林さんはその団体の賛助会員にもなっているそうです。
釧路の町を賑やかに…小林さんの今後の思い
最後に小林さんの活動の今後について伺いました。
大きな目標はふたつあります。まずひとつは町としての賑やかさを取り戻したいですね。釧路ってお祭りの時は人がいっぱいで、すごく活気がありますよね。それが日常的になればいいなと思っています。
たしかにお祭りの時は、釧路にこんなに人がいるのかってびっくりするぐらい、中心街に人がやってきますよね。
ええ、その中でも幣舞橋周辺が賑やかさの中心になっていけるよう、活動していきたいと思っています。
すてきですね^^
あとは、経済的にも釧路が活発になればいいと思っています。先程も申し上げたとおり、今、釧路は外国人観光客の市場がすごく伸びている。つまり観光消費額が期待されているということなんです。
その中で、釧路市がその観光消費額を受け取ることができ、さらに釧路市からもそれが提供されるという関係の中で、経済を伸ばしていける一助になればと思っています。
観光業が伸びると釧路も潤いそうですが…。
実は観光客が増えたからといって仕事も人口も増えて、さらに釧路の経済が良くなるかと言うとそううまくは行かないんです。とはいえインバウンドを飛び台に、もっと経済を潤すことはできるはずです。例えば越境ECなどはいいかもしれませんよね。
(えっきょういーしーって何だろう…食べ物かな…。名前的に私の好みじゃなさそう…)
越境ECっていうのは取り寄せ、要はネット通販のことなんですけど。
(!! 黙っててよかった!)
釧路には美味しいものがたくさんありますよね。外国人観光客がここへ来た時に、おいしいものをたくさん食べて、帰ってからまた買いたいと思うかもしれない。その時に取り寄せやネット通販で購入できれば、釧路にもまたお金が落ちますよね。
確かに! そういえば、日本で買っても海外に持ち込みできないものや、持ち込めても数に限りがあるものなどもありますもんね。
そうなんです。さらにビジネスを立ち上げるような外国人の方に釧路に来てもらって、「これは自分の国で売れる!」と思ったものをビジネスとして始めてもらえればいいですよね。そのためにゲストハウスを利用してもらえればうれしいです。
美味しいものがたくさんあるという意味では、釧路は強いですね。
他にも釧路にはいいところがたくさんありますよ! 私はこれまでいろんな地域を周りましたが、釧路ほど資源に恵まれたところはそうそうありません。国立公園も2つあるし、食べ物だって最高レベルにおいしい! でも、それが認識されていないし、活かされていないのが現実なんです。
なるほど…。地元の人が当たり前だと思っていても、実はそうではないことって結構あるんですね。
そうですね、釧路は恵まれている場所だと思います。今はそれがうまく外に提供できる形になっていないだけなので、後はそれを活かせるかどうかがポイントかもしれませんね。
取材を終えて
ゲストハウスだけでなく、釧路の経済のためにさまざまなことにチャレンジしようとしている小林さん。今後は釧路全体が外国人を歓迎するムードになってくれたら、と話していました。
街中で急に外国の人に話しかけられたら、軽くパニックになってしまいそうですが、よく聞けば単語などから意外と意味がわかるそうです。英語はわからないからとそっぽを向かずにどうにか相手の話を聞いて、こちらの思いを伝えられるようになれたら、自然と海外の方に「釧路はいい街だ」ということが伝わっていくかもしれませんね。
難しいですが石久保も恥ずかしがらずに歓迎の気持ちが伝えられたらと思います!
【ゲストハウス幣】
住所:釧路市南大通1-2-5
電話番号:0154-64-6849
Facebook:https://www.facebook.com/kushiro.nusa