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道東の冷涼な気候と大地が育んだウイスキーが誕生。『厚岸蒸溜所』で学ぶウイスキーの作り方・後編

2018.10.24

ウイスキーを作るまでの工程は大きく分けて7つありました。
前回の糖化までの過程を終えて、これから美味しいウイスキーとなっていく工程をお見せします!

キレイな黄金色のお酒へ

④醗酵
麦汁に酵母を入れて醗酵(アルコール生成)させること。酵母を入れることで糖が分解され、ウイスキー独特の味わいや香りが作られてゆきます。この時にできた発酵液を「もろみ」と呼ぶそうで、この時点でのアルコール成分は約7~8%ほど。

立崎所長「続いてこちらが発酵タンクです。6個ありますが、現在使用しているのは5個で、1個は空きになっています」

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醗酵日数を重ねた方が泡が消えてキレイな黄金色になるそうで、通常は2〜3日の発酵日数のところを厚岸蒸溜所では5日間醗酵させているとのこと。これは世界の蒸溜所の中でもかなり少数派だそうです!!

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立崎所長「こちらは今日仕込んだ1日目のタンクですね」
石久保「泡がいっぱいですね」
立崎所長「エールビールのような麦っぽい匂いになりますが、2日目あたりからはりんごっぽいフルーティーな匂いになって、どんどんすっきりとしたいい香りになっていくんです」

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立崎所長「そして、こちらは4日目のものになります」
石久保「泡がなくなっているし、匂いもさっきより甘くて、すごくすっきりしてますね!」

⑤蒸溜
蒸溜とは、液体を熱し蒸気(湯気)となった気体を、再び冷やして液体に戻すこと。ウイスキーの蒸溜は先ほどのもろみの主成分である水とエタノールの沸点の違い(水は100度、エタノールは78.3度)を利用して、エタノールを蒸発させながら再び液体に戻して濃度を高めてゆきます。

立崎所長「こちらがポットスチルになります」
石久保「大きいですね!」

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石久保よりもはるかにデカいポットスチル!!

厚岸蒸溜所には2つの大きなポットスチルがあり向かって右が「ウォッシュスチル(初溜器)」、左が「スピリットスチル(再溜器)」と呼ばれています。

蒸溜は通常2回行なわれ、1回目の蒸溜を「初溜」、2回目の蒸溜を「再溜」と呼びます。初溜でできたものは「ローワイン」といって、これをもう一度蒸溜することが再溜です。再溜は液体の抽出される順序でそれぞれ「フォアショット」、「ミドルカット」、「フェインツ」と呼ばれています。

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イメージ的にはこんな感じでしょうか。上の再溜の図でミドルカットの部分は原酒として、フォアショットとフェインツは翌日、別のローワインと混ぜてもう一度再溜しています。

⑥樽詰
蒸溜したウイスキーの原酒に水を加えて樽に充填してゆきます。この時のアルコールは約64パーセントで、樽の種類にはバーボン樽、シェリー樽、ミズナラ樽などがあります。

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樽詰室に入るとさっそく樽を発見!

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横になっていても石久保の腰ぐらいまでの高さがあります。

⑦熟成
厚岸蒸溜所では「ダンネージ方式」という貯蔵方式が取られています。直接雨風が当たらない場所で木のレールを使って樽を積み上げるのがこの方式の特徴です。

最後は熟成庫も見学させていただきました。

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出荷を待つ見渡す限りの樽!! 

石久保「だいたいどのくらいの数の樽が保管されているんですか?」
立崎所長「現在は、約1,000樽超を保管しています(2018年10月4日現在)」

見学を終えて試飲、ならぬ試見?

最後に、今年の2月に発売したウイスキーと8月から発売になったウイスキーを紹介します。

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向かって左側は今年の2月発売の『厚岸 NEW BORN FOUNDATIONS 1』、右側が8月に発売になった『厚岸 NEW BORN FOUNDATIONS 2』。

石久保「2つの違いは何ですか?」
立崎所長「2月発売の第1弾はノンピートの原酒を使用していますが、8月発売の第2弾はピーテッドの原酒を使用しています。熟成期間も第1弾は約5カ月から14カ月ですが、第2弾は8カ月から17カ月と少し長くなっています」

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実際に試飲……はできないので、見た目と香りだけで比較してきました!

石久保「色も若干違いますよね。第1弾の『厚岸 NEW BORN FOUNDATIONS 1』の方が濃い色に見えます」
立崎所長「そうですね。味はどちらも柑橘系の風味があるのですが、第2弾の『厚岸 NEW BORN FOUNDATIONS 2』の方が甘さを感じられるようになっています」
石久保「香りも全く違って、第2弾の『厚岸 NEW BORN FOUNDATIONS 2』方が塩っぽさを強く感じますね」
立崎所長「バニラやチョコレートのような甘さの中に塩っぽさを感じられるのがこの第2弾の『厚岸 NEW BORN FOUNDATIONS 2』の特徴なんですよ」

厚岸蒸溜所の目標

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今後のウイスキー作りで立崎さんは「麦汁の段階から美味しくすること」を目指しているそうで、そこへ向けて醗酵にかける日数を5日にしてみたりと色々と試している段階だとか。さらに厚岸町の皆さんと交流すべく「牡蠣まつり」への出店も考え中だそうです。

立崎所長「まずは2020年にシングルモルトを発売することです。それから3〜4年後に《オール厚岸産》のウイスキーを目指したいですね。現在は材料が富良野産の大麦、樽は北海道産のミズナラを使用しているので《オール北海道》という部分は達成できていますが、将来的には材料も樽も厚岸のものを使用したいと思っています」

とのこと。最後の最後に、ウイスキーの美味しい飲み方を尋ねてみました。

立崎所長「まずはストレートで1回味わってほしいですね。その時は1杯を30分くらいかけてかけて、ゆっくり味わってほしいなと思います。作り手の気持ちも考えながら飲んでいただけたらさらに嬉しいですね」

立崎所長、本当にありがとうございました!

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なお『厚岸蒸溜所』さんの工場見学は道の駅「厚岸味覚ターミナル・コンキリエ」が主催しているので、興味がある方は、ぜひ体験してみてください!



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【堅展実業株式会社 厚岸蒸溜所】
住所:北海道厚岸郡厚岸町宮園4丁目109-2
定休日:不定期
工場見学の申込み:厚岸道の駅 コンキリエ
Facebook:https://www.facebook.com/akkeshi.distillery/

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